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「しがみつかない生き方」香山リカ

2009年08月29日
しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (幻冬舎新書)しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (幻冬舎新書)
(2009/07)
香山 リカ

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著者の本は、これまで何となく避けていました。
タイトルから感じる「雰囲気」が好きでなかった、というのがその理由です。

今回の著書は、「勝間和代を目指さない」という帯に書かれたコピーが話題になり、とても売れ行きがよいようですが、私は、少々心が疲れていたこの時期に、「しがみつかない」というテーマが気になって、読んでみることにしました。

著者の主張はあまり論理性がなく、仮説の上に仮説を積み重ねた上で結論を導き出し、その仮説や結論を検証することもないので、やや論理が飛躍してしまっている印象を受けることが多く感じられます。その点は非常に残念なのですが、主張していること自体は、精神科医らしく、心穏やかに過ごすための心の持ちようという処方箋が数多く示されています。


ちっぽけな幸せもなかなか手にできないこの時代、少しでもそれに近づくためには、私たちひとりひとりはどういう心がけで、何をすればよいのか。それについて、これから考えてみたい。




序章において、そのようなテーマが示され、各章ごとに、「恋愛にすべてを捧げない」「自慢・自己PRをしない」「すぐに白黒つけない」「老・病・死で落ち込まない」「すぐに水に流さない」「仕事に夢をもとめない」「子どもにしがみつかない」「お金にしがみつかない」「生まれた意味を問わない」「勝間和代を目指さない」と、いろいろなことに「しがみつかない」考え方が提案されます。


この本において、著者が最もはっきりと主張していることは、以下に表れていると思います。

とりあえず自分に与えられている仕事、役割、人間関係に力を注ぎ、何かがうまくいったら喜んだり得意に思ったりすればよいし、そうでないときには悲しんだり傷ついたり、また気持ちを取り直して歩き出したりする。そんな一喜一憂を積み重ねながら、どこから来たのか、どこに向かっているのかもわからないまま、人生の道を歩いていくその足取りの中で、しみじみとした味わいや満足が得られるのではないか、と私は考える。



つまりは、あまり「夢」や「目標」や「生きる意味」などというものにしがみついたり拘泥したりせず、一つ一つの目の前の出来事に取り組み、一つ一つの出来事を、良いことも悪いことも受け入れていこう、というようなことを言っているのではないかと解釈します。

確かにそうすることは、心の平安を得るために、とても大切なことでしょう。
でも、人間は本質的にしがみつく生き物だと思いますし、しがみつくからこそ進歩がある、というのも間違いのない事実ではないでしょうか。

「サルを捕まえる道具」という話を聞いたことがあります。
透明な丸い容器に、手が何とか入るくらいの穴が空いており、中にはエサが入っています。
サルは中に手を入れてエサを掴みます。でもそうすると、エサを握ったままでは手が抜けないのです。
エサを手放せば手が抜けて逃げられるのに、エサを手放したくないばかりに、そこから逃げられず、人間に捕まってしまう。
そういう話です。

ものごとにしがみつき、執着していると不自由になります。
何かを捨てたときに、自分が大きく変わり、成長するということも私は経験上知っています。
それでもやはり、いつも何かにしがみついていくからこそ、得るものもあるのではないでしょうか。

著者の提案する「しがみつかない生き方」のいくつかは、疲れている私の心を落ち着かせてくれる処方箋になりました。
しかし、本質的にしがみついてしまう性のある人間という生き物が、「しがみつかない生き方」にしがみつくのは、むしろ難しいのではないでしょうか。
それよりは、著者も言うように、

あいまいさを認めるゆとりが、社会にも人々にも必要なのではないだろうか。



という、人に寛容な社会を取り戻すことの方が、日本が発展していくためには有意義なように思います。



ちなみに一人法務をやっている私としては、以下の言葉に激しく同意しました。

自分が「誰とも交替のきかない存在」だとしたら、転勤もできず休暇も取れず、もっと言えば病気になることも死ぬこともできない。気が抜けない毎日で、息が詰まり、治療にもマイナスの影響が出るに違いない。「まあ、私がいなくても、かわりの人がなんとかしてくれるだろう」と思って伊いるくらいが、肩の力が抜けて、いちばん効果的な治療を行うことができるのではないだろうか。



会社で大きな責任を負うにつれ、この言葉の重みを感じてしまうものだと思います。




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