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「監査役が一人の会社で、報酬の最高限度額を定めることは可能か」を検討してみた。

2010年01月02日
監査役の報酬について、会社法387条は以下のように定めています。


第387条
①監査役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
②監査役が二人以上ある場合において、各監査役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、前項の報酬等の範囲内において、監査役の協議によって定める。
③監査役は、株主総会において、監査役の報酬等について意見を述べることができる。


(ここでは便宜上、金銭報酬を前提として記します)

取締役の報酬についても同様に、定款又は株主総会決議で定める必要があります。
しかし取締役の報酬については、いわゆる「お手盛り防止」が目的であって、実運用上は株主総会で最高限度額を定め、個々の取締役の報酬については取締役会で決定していることが多いかと思います。

しかし監査役の報酬については、「お手盛り防止」の要請もないわけではありませんが、定款又は株主総会決議で報酬額を定める主な目的は、「監査役の地位の独立性を確保すること」とされています。
実際には、株主総会に提案される監査役の報酬に関する議案は通常、取締役会が決定するので、監査役は株主総会において意見を述べることができるようになっているわけです。

ここで気になることが一つ。

取締役の報酬総額を例えば1億円と決定し、3人の取締役がそれぞれ3,000万円を報酬として受け取ることを取締役会で決定したとします。
これは「お手盛り防止」という目的に適うもので、1,000万円の枠が残ったとしても全く問題はありません。

しかし監査役の報酬総額を1億円と決定し、3人の監査役がそれぞれ3,000万円を報酬として受け取ることを監査役の協議によって決定した場合はどうでしょう。
この点に関しては少し議論のあるところで、「監査役の地位の独立性を確保する」という本条のねらいからすると、株主総会で定めた報酬枠を使い切らないことに問題がないわけでなく、原則として株主総会で定めた報酬枠の全額を配分すべきとの見解もあります。
しかし報酬総額の上限を決定する際に監査役が意見を述べられる建前と、個別の報酬額は監査役自身の協議によって定められる以上、監査役の地位の独立性は確保できているといえるので、枠を使い切らなくとも問題はないように思います。
また、実務上もこの解釈で運用されているようです。


しかし、ここでさらに気になることが一つ。

「監査役が1名である場合に、監査役の報酬総額を定めた場合、当該監査役の報酬はどのように定めるべきか」
これが今回のメインテーマです。

「監査役が1名であれば1名分の監査役報酬を決めればいいじゃん」という向きもあるかも知れません。
確かに正論です。しかもそれが本来あるべき姿でしょう。
しかし例えば、監査役の具体的な報酬額を公表してしまうことに抵抗がある場合や、過去に監査役が数名いたのだが現在は1名になってしまったという場合や、数年前に決議をしたままになっていたが現在の監査役にはそこまで出すわけにはいかない、などということもあるわけです。

つまり単純化すると、監査役報酬について定款や株主総会決議にて「枠」を取っているが、1名しかいない監査役の具体的な報酬額を株主総会等で決定していない場合に、会社は監査役にいくらの報酬を払えばいいのか、という問題です。

この問題の解決策は3つあるかと思います。

まず一つ目。
この時点では監査役に具体的な報酬請求権が発生していないため、即座に臨時株主総会を開催して、当該監査役の報酬を決定してしまう方法。
しかしこの方法は、株主数が多い会社では現実的ではありませんし、監査役の具体的な報酬額を公表することに抵抗がある場合には、解決策になり得ません。

二つ目。
次回開催される定時株主総会なり臨時株主総会なりで、過去に支払った監査役の報酬について遡って承認決議を行う方法。
この方法が可能なことは、「最三小判平17.2.15」にて下記のとおり示されています。


(略)株主総会の決議を経ずに役員報酬が支払われた場合であっても、これについて後に株主総会の決議を経ることにより、事後的にせよ上記の規定の趣旨目的は達せられるものということができるから、当該決議の報酬の支払は株主総会の決議に基づく適法有効なものになるというべきである。



しかしやはりこの方法においても、事後的にせよ監査役の具体的な報酬額が公表されてしまうことに変わりはありません。



そして三つ目。

監査役自身に決定してもらう方法。


会社法施行により取締役が1名しかいない株式会社が存在するようになりました。
そのような会社においては取締役会議事録に替えて「取締役決定書」などという書面を作成することがあります。
それと同様に「監査役報酬決定通知書」(もちろんタイトルはこれに限られませんが)という書面を監査役から提出してもらうことによって、具体的な報酬額を決定する方法です。
もちろん、例えば3,000万円の監査役報酬の「枠」を定款や株主総会で決議している会社において、監査役1名に対して1,000万円を報酬として払いたいと考えている場合に、当該監査役が「3,000万円に決定しました」と言ってきたら驚いてしまいます。
しかし通常であれば、監査役が就任を承諾する時点で報酬額の合意も得られているので、そのような問題が発生することはまずないと考えて良いのではないかと思います。

そして「監査役報酬決定通知書」は、以下のような書式でよいのではないかと考えます。


株式会社○○
代表取締役○○殿

          監査役報酬決定通知書

会社法第387条1項に基づき、○年○月○日開催の貴社定時株主総会において、貴社の監査役報酬は年額3,000万円以内と定められています。
本日、貴社監査役に就任するにあたり、私の監査役の報酬を下記の通り決定いたしましたので通知します。
なお、下記報酬額は会社法第387条第2項に準じ、決定いたしました。

               記
  監査役報酬:年額1,000万円
                       以上

             ○年○月○日
                  住所
                  氏名



この方法を採用したとしても、「監査役の地位の独立性の確保」という本条の目的は達せられ、また株主に不利益を与えるものでもないため、問題はないのではないかと考えています。
もちろん以上は私の個人的見解ですので、この方法を採用される場合はご自身の責任のもと行って頂きたいと思います。
しかし、下記書籍の以下の記載から、その有効性に問題はないと考えています。


「リーガルマインド会社法」弥永真生


監査役の独立性確保という立法趣旨からは、定款または株主総会においては少なくとも総額を決めるか、最高限度額および最低限度額を決めることが立法趣旨に適う。(中略)その際に決定を株主総会から委ねられる機関は通常、業務執行の意思決定機関である取締役(会)であるが、監査役(会)に独立性確保のため委ねることもできると考える。その場合はお手盛り防止の要請も生じよう。



「会社法コンメンタール(8)機関(2)」落合誠一編


なお、監査役が1人しかいないときに、定款または株主総会において同人の報酬額そのものではなくその最高限度額を定め、その範囲内で、当該監査役が自分の報酬額を決めるものとしてよいかどうかについては、名文の規定がない。しかし、そのような定め方をしても監査役の独立性の保障の趣旨には反しないし、また、上限が画されている以上は株主の利益を害することも考えにくいから、本条2項に準じた報酬等の決定方法として許容されるべきである。



「役員報酬の法律と実務」味村治・品川芳宣


監査役の員数が一人である場合に、株主総会の決議によって監査役の報酬の額の最高限度を定めた場合には、その決議の趣旨は、その額の範囲内において監査役の決定する額を監査役の報酬の額とすることにあると解すべきであり、その額の範囲内で監査役が報酬の額を決定したときは、これによって、その報酬の額が監査役と会社との間の報酬の特約の内容となって、監査役は、その額に相当する報酬請求権を取得する。





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