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「日本型コーポレートガバナンス」伊丹敬之

2010年08月11日
日本型コーポレートガバナンス―従業員主権企業の論理と改革日本型コーポレートガバナンス―従業員主権企業の論理と改革
(2000/12)
伊丹 敬之

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あまりにボリュームのある内容だったので、もう一度アタマの中を整理してから感想を書きたいと思っていますが、読み終えて頭に浮かんだことを簡単に残しておきたいと思います。

昔のアメリカは長期雇用が一般的で、長期雇用が特徴である「日本型経営」などというものは存在しない。



「会社は誰のものか」などという議論は無益である。



そのような言葉をよく耳にします。
多くはいわゆる「アメリカ型経営」を意識した、株主重視の発想をされる方による発言のように思います。

しかしここ数年のアメリカ、特にアメリカの金融機関の凋落を目にし、株主(或いは株価)を重視し過ぎた短期的視点の経営の弊害が指摘されるようになっています。

本書は2000年12月、今からおよそ10年前に出版されたものですが、「従業員主権がメイン、株主主権はサブ」という明確なメッセージを打ち出しています。
筆者のそのようなメッセージ自体はそれ以前、1987年の「人本主義企業―変わる経営変わらぬ原理」から一貫しているようですが、本書では、新しい会社法、新しいコーポレートガバナンスのあるべき姿が、かなり細部に亘り提案されています。

ここのところ話題になっている「従業員代表(選任)監査役」のように、どこか降って沸いたような議論ではなく、日本の戦後のコーポレートガバナンスを俯瞰し、同じ敗戦国であるドイツの共同決定法を参考にしながらも、日本社会に親和性の高いコーポレートガバナンスの姿を模索する姿勢には、執念ともいえる鬼気迫るものすら感じます。


冒頭で私は、「会社は誰のものか」という議論は無益である、ということを述べる人が多いことに触れましたが、これは暗に「会社は当然、出資者である株主のものである」という意味が込められていることが多く、たいていの場合、「アメリカではそもそもそのような議論の余地すらないのだ」というような言葉が付け加えられたりします。

しかし本書は、「会社の主権者は誰か」という主権論がベースにあってはじめて、「どのような経営者のチェックシステムを構築するか」というメカニズム論を議論することができるというスタンスを採っています。
つまり「会社は誰のものか」という議論を抜きにして、委員会設置会社だ従業員代表監査役だといったような「メカニズム」の話をすることこそ無益である、ということでしょう。

この点について最終的に筆者は、「コア従業員」「コア株主」といった言葉を使い、会社への長期的なコミットメントの大きさを尺度にして主権者を決定したうえで、それらの主権者間のバランスをうまく取りつつ経営者へのチェックを行う体制を提案してます。


ところで現行の会社法では、理論的には割と自由に機関設計をすることが可能になっています。
しかしある程度の規模の会社、特に上場企業ともなると、これまでどおりの、取締役会を監査役会がチェックする体制か、委員会設置会社しか実質的には選択の余地はありません。

個人的には、会社というものが経済に与える影響の大きさを考えると、会社の「あるべき姿」というものはある程度、国が明確に示すべきではないかと思っています。
理念のない会社法制や、国の長期的な経済戦略に基づかない会社法制を積み重ねていくことは避けなければいけません。
そう考えると、「機関設計の自由度は高いけれども、実質的な選択肢は狭い」という現状は、日本という国が「会社」というものをどのように導いて行きたいのかはっきり示していない、と言えるのではないでしょうか。
それに対して、例えばドイツの共同決定法などは、問題点も多く指摘されているようではありますが、ひとつの国として会社の「あるべき姿」を真剣に考えてきたことは確かでしょう。
(ドイツの制度については旬刊商事法務1900号に詳細なレポートがあります)


ここのところ様々な団体がそれぞれの立場からコーポレートガバナンスに関して意見を述べています。
そのあたりは「コーポレート・ガバナンスハンドブック」に詳しいのですが、議論の土台となるべき、「会社は誰のものか」という一見無益とも思えるようなことについても、もう一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。
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