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企業法務パーソンも知っておくべき戦略 ―「プラットフォーム戦略」平野敦士カール、アンドレイ・ハギウ

2010年10月11日
プラットフォーム戦略プラットフォーム戦略
(2010/07/30)
平野 敦士 カール  アンドレイ・ハギウ

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先日、某社が主催する、本書の著者である平野敦士カール氏のセミナーに参加する予定でした。
そしてお金もきっちり振り込んでいたのですが、当日どうしても都合がつかず参加できませんでした。

本書はセミナーに参加できなかったことを非常に悔やんでしまうほど、著者の「プラットフォーム戦略」に関する高い識見や、「プラットフォーム戦略」の有意性に触れることのできる一冊です。


ここ数年、「プラットフォーム戦略」という言葉を耳にしたり口にしたりということが増えてきているように思います。
私も、おそらくはこれを読んでくださっている皆さんのビジネスにおいても、「プラットフォーム戦略」は非常に有意なものであるのではないかと思います。
そして自社の「プラットフォーム戦略」について思いを巡らせながら本書を読むと、あまりに興味深いテーマの数々につい引き込まれてしまうことでしょう。

企業法務パーソンである私たちも、自社が何らかのプラットフォームを提供しているとき、或いは、プラットフォームに参加するとき、長期的な視点から自社に不利な契約となってしまわないよう、本書の内容を知っておくことが必要になるのではないかと思います。
なぜなら、今やほとんどのビジネスは何らかのプラットフォームを提供したり、何らかのプラットフォームに参加したりしなくては成り立たなくなってきているからです。

例えば「はじめに」で著者が例として挙げているだけでも、以下のようなプラットフォームがあります。


たとえば商店街、婚活カフェ、クレジットカード、ショッピングモール、病院、雑誌や新聞、おサイフケータイ、iモード、Wii、プレイステーション、ビジネス・スクールなどの教育機関、証券取引所、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やツイッター、築地市場、六本木ヒルズなどでも使われています。



これらの例をみると、「考えようによってはウチのあのサービスもプラットフォームだなあ」と思われる方も多いのではないでしょうか。


本書では「プラットフォーム戦略」の定義といえるようなものが3回登場しますが、


多くの関係するグループを「場」(プラットフォーム)に乗せることによって外部ネットワーク効果を創造し、新しい事業のエコシステム(生態系)を構築する戦略


という定義が、ここで紹介するには最もシンプルかつわかりやすいかと思います。


さて、例によって目次を引用します。


1.世界最先端のプラットフォーム戦略とは?
2.ケースで学ぶ 勝つプラットフォーム構築のための9つのフレームワーク
  ①事業ドメインを決定する
  ②ターゲットとなるグループを特定する
  ③プラットフォーム上のグループが活発に交流する仕組みを作る
  ④キラーコンテンツ、バンドリングサービスを用意する
  ⑤価格戦略、ビジネスモデルを構築する
  ⑥価格以外の魅力をグループに提供する
  ⑦プラットフォーム上のルールを制定し、管理する
  ⑧独占禁止法などの政府の規制・指導、特許侵害などに注意を払う
  ⑨つねに「進化」するための戦略を作る
3.プラットフォームの横暴にどう対処するべきか
4.フリー、オープン化という「負けない」戦略
5.日本企業復活への処方箋
※Chapter2以外は、小項目を省略させて頂きました。



話は少し逸れますが、ずいぶん前に土井英司さんが出版に関して、「売れる著者であれば自分で出版社を持った方が間違いなく儲かる。しかしそうすると他の出版社が敵になる。そこで(紙の出版に限らず)どのメディアが最も効果的に読者を集められるかを見極めながら、優良なコンテンツを提供し続けるという選択をする考え方もある」という趣旨のお話をされていたことがあります。(正確に再現できていないかも知れませんがご容赦を)

一方、一般的な法律雑誌などでは、弁護士や学者そして官僚や大企業の法務部課長クラスでないと、法律に関係することについて表現する機会を得ることは難しいのが現状ではないかと思います。
私はずいぶん前からこの状況に疑問を感じていて、何の「権威」もない私のような人間の拙い論考などを発表する場を作りたいなあ、などとぼんやり考えていました。つまり法務系同人誌のようなものですね。(私の場合は「権威」だけでなく「内容」もないのですが)
もちろんBlogという場で発表することは、いつでも誰でもできるのですが、「権威」に対するアンチテーゼの意味も込めて、「出版」という形が望ましいと考えていました。

これは「ITエンジニアのための『契約入門』」という形で、気がついたら実現していました。(「権威」に対するアンチテーゼという意識や意味合いは全くありませんでしたが)

つまり、Appleの提供するプラットフォームに乗ることによって、「出版」という表現の場を持つことができたわけです。
そしてApple、amazonやGoogleなどは、いかに自分たちの提供するプラットフォームにお客を集めるか、ということに、今まさに凌ぎを削っている真っ只中です。
これはmixi、GREE、モバゲーという日本のSNSでも同様です。

このようにして「プラットフォーム戦略」は、気がつくと身の回りに溢れていて、いろいろな企業がより魅力的なプラットフォームを構築しようと励んでいるんですね。
そこに参加するにも、プラットフォームを提供するにも、「プラットフォーム戦略」の考え方を知っておくことは、もはや避けて通れないのではないでしょうか。


さて、著者は本書で、プラットフォームには5つの機能があるといいます。
それは以下のとおり。
①マッチング機能
②コスト削減機能
③検索コストの低減機能(ブランディング・集客機能)
④コミュニティ形成による外部ネットワーク効果・機能
⑤三角プリズム機能

そして「勝てるプラットフォーム」を作る際の重要なポイントとして以下の3つを挙げます。
①自らの存在価値を創出すること(検索コストと取引コストを下げる)
②対象となるグループ間の交流を刺激すること(情報と検索)
③統治すること(ルールと規範を作りクオリティをコントロールすること)

③の「統治すること」というのは以外かも知れません。
しかし、「そのプラットフォームがもつ特徴と、集まっているグループのクオリティが一定であることを維持、進化させていくことが大切」ということで、例えば時に"検閲"とまでいわれるAppStoreの品質維持の取組みを正しい戦略であると評価しています。


さらに、「プラットフォーム構築の9つのフレームワーク」として、プラットフォームを構築するまでの9つのステップが紹介されており、上記目次「2.」のとおりの項目が挙げられています。
この部分は本書のキモとなる部分でしょうが、一つ一つ紹介していればキリがないほど、有益な情報や考え方が詰まっているので、是非直接読んでみて頂きたいところです。
一ヶ所だけ引用すると、


この際によくいわれるのが「にわとりと卵の議論」です。つまりにわとりがいるから卵が生まれたのか、卵があるからにわとりが生まれたのかという比喩のように、よいコンテンツがあるから人が集まるのか、人がいるからよいコンテンツが集まるのか、という問題です。べつの言い方をすればポジティブ・フィードバックの1回転目をいかにして起こすかという問題です。


この最後の一文は示唆に富んでいて、私に貴重な「モノの考え方」を教えてくれました。


そして著者は、こうしてできあがたプラットフォームは、「プラットフォームの横暴」と呼ばれる3つのパターンの道を辿る傾向があるといいます。
それは、
①利用料の値上げリスク
②プラットフォーマーによる垂直統合リスク
③プラットフォーマーが顧客との関係を弱体化させるリスク
の3つです。
特に①の「利用料の値上げリスク」は、私たち法務担当者としてもプラットフォームに参加する時点から、自社の担当者と情報をよく交換したうえでリスクを想定し、契約書に反映させておく必要のある部分ではないかと思います。(プラットフォームを提供する場合も同様です)

著者も、楽天市場を例に挙げて以下のように言っています。


参加している店舗側の交渉力はきわめて小さくなってきているのが現実です。後にお話するように、本来はこうした事態を予測し、契約書などで自社のビジネスを守る対策を加入時にとるべきだったのです。



また、有名なトイザらスとアマゾンの訴訟の話についても以下のように評価しています。


このケースにおけるトイザらスの戦略の失敗はどこにあったのでしょうか。
2000年の契約前においては、玩具販売小売全米トップのトイザらスはアマゾンよりも圧倒的に優位な立場にあったはずです。つまり、契約上の甘さがあったといえるでしょう。
(略)
ではこの場合、トイザらスはどのような契約交渉をすべきだったでしょうか。
たとえばですが、独占契約条項とともに、それに違反した場合の損害額をあらかじめ明記すること、あるいは競合のほかの小売店からあがる売上の一部からもレベニューシェアを得るような、玩具部門におけるプラットフォーム・オン・プラットフォームの可能性を交渉すべきだったといえます。まだアマゾンがそれほど大きなプラットフォームになっていなかった段階であれば、十分に交渉の余地はあったのではないかと思うのです。



このように、プラットフォームというものの重要性が増してきている今日、法務担当者である私たちも「プラットフォーム戦略」の概要は理解しておく必要があるのではないかと思います。
そして自社がプラットフォームを提供するとき、プラットフォームに参加するとき、目先の利益に飛びついてしまうことのないよう注意する必要があります。
そして長期的な視点から、不利な契約を締結してしまうことのないよう、プラットフォームというビジネスの本質を見る「目」を鍛えておきたいものです。
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