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「小さき者へ」 有島武郎

2010年11月07日
小さき者へ・生れ出ずる悩み (岩波文庫)小さき者へ・生れ出ずる悩み (岩波文庫)
(2004/08)
有島 武郎

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この本は高校生の頃に、一度読んだことがあるように記憶しています。
その当時の私は学校の授業をマトモに受けることはあまりなく、居眠りをするか本を読むか、ひどい時にはクラスメイトと「UNO」をして遊んだりしていました。

私は学校の授業を熱心に受ける学生ではなかったのですが、本はよく読んでいました。
その頃に何となく手に取った一冊だと思うのですが、今になって読み直してみて初めて、この作品の温かさが心に沁みます。

「小さき者へ」はたった18ページしかない、短い話です。
小説でもエッセーでもなく、いうなれば「我が子に宛てた手紙」のような作品です。
幼い子どもたち3人を遺して死んでしまった妻のことを回想しつつ、我が子への思いを真っ直ぐに表現しているこの作品は、同じく幼い子どもを持つ父親として、強く胸を打たれます。

解説によればこの作品は、「大正6年12月7日の朝から原稿紙に向かい、その夜ふけの2時ごろまでに、一気に書きあげた」ものだそうです。
そのためか、落ち着いた文体の中にも、我が子や妻への溢れんばかりの思いが詰め込まれた作品に仕上がっています。
安っぽい喩えですが、夜中に書いた手紙を翌朝になって読み返し、恥しい気持ちになるような感覚とでも言えばいいのでしょうか。

この作品の解説をすることは、私などにはとてもできるようなことではありません。
ただ、私と同年代のお父さんには(過去に読んだことがあるよ、という方も含めて)是非読んで頂きたいという思いから、少々長いのですが冒頭の段落を引用しておきたいと思います。


お前たちが大きくなって、一人前の人間に育ち上がった時、―-その時までお前たちのパパは生きているかいないか、それは分らない事だが ―-父の書き残したものを繰拡げて見る機会があるだろうと思う。その時この小さな書き物もお前たちの眼の前に現れ出るだろう。時はどんどん移って行く。お前たちの父なる私がその時お前たちにどう映るか、それは想像もできない事だ。恐らく私が今ここで、過ぎ去ろうとする時代を嗤い憐れんでいるように、お前たちも私の古臭い心持を嗤い憐れむのかもしれない。私はお前たちのためにそうあらん事を祈っている。お前たちは遠慮なく私を踏台にして、高い遠い所に私を乗越えて進まなければ間違っているのだ。しかしながらお前たちをどんなに深く愛したものがこの世にいるか、あるいはいたかという事実は、永久にお前たちに必要なものだと私は思うのだ。お前たちがこの書き物を読んで、私の思想の未熟で頑固なのを嗤う間にも、私たちの愛はお前たちを暖め、慰め、励まし、人生の可能性をお前たちの心に味覚させずにおかないと私は思っている。だからこの書き物を私はお前たちにあてて書く。



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